業務関連

腎臓移植と臨床工学技士の関わり 腎臓移植の基礎まとめ

two person doing surgery inside roomPhoto by Vidal Balielo Jr. on Pexels.com

どうも、筋トレ臨床工学技士ブロガーkenです。

本日は腎臓移植についてです。

僕はまだ腎臓移植に関わった経験はありませんが、今後のために今回自己学習をしました。

全く未知の領域でしたが、実際は思っていたよりも様々な職種が関わる治療であり、

その中でも僕たち臨床工学技士が関わるところも多いなという印象を持ちました。

今回は腎臓移植の基礎的な概要と、臨床工学技士が関わるポイントについてまとめていきます。

既に行っている業務についてはこちら

 

学習中に呟いたツイートとそれについての補足になります

それでは本日もよろしくお願いします。

腎臓移植において、臨床工学技士が関わるポイントを中心に基礎知識をまとめます

腎臓移植の基礎

 

 

腎臓移植の他職種連携

どの医療にも言えることではありますが、特に腎臓移植は他職種連携が大事とのこと。

病院によって泌尿器科なり腎臓外科なり、実際に手術する科はもちろんのこと、

ドナー(腎臓を提供する人)と
レシピエント(腎臓を受け取る人)の
適正判断には腎臓内科医の判断が必要

 

ドナーとレシピエントの精神面の判断も必要となるので、精神科の介入もある。
(これについては恥ずかしながらとても意外だと思いました。)

これについては、ドナーの自発的な腎提供の希望の確認が重要とのことです。

生体腎移植ドナーとして腎提供前に、十分な身体的、心理的評価と社会的背景に 関する評価を精神科医などの第三者も関与する形で受けさせなければならない。

生体腎移植ドナーの自己決定能力に疑いがある際には、必ず精神科医、心理療法士 などの評価を受ける必要がある。その際、腎移植に豊富な経験を有する看護師やコ ーディネーターなどが同席することは適正な評価にとり重要である。

引用:生体腎移植のドナーガイドラインより

 

 

この他にも術前の適性検査
(細胞レベルでの拒絶反応が起こらないかの判断)や、
一般検査では臨床検査技師、放射線技師

術前、術中、術後ケアに看護師

免疫抑制剤に強く関わる薬剤師

後述しますが、術前の透析や血漿交換に関わる臨床工学技士など、

僕が思っていた以上に様々な職種の関わり、連携が必要な治療でした。

 



献腎移植と生体腎移植

  • 献腎移植・・・心停止後もしくは脳死判定後のドナーからの提供
  • 生体腎移植・・・生きている肉親からの提供(腎臓は二つあり、一つ失っても生きていくことができる)

献腎移植は日本では非常に少ないです。

2010/7/17から施行された改正臓器移植法でドナー提供の条件が緩和されてもほとんど増加していないです。



臨床工学技士は術前の透析と血漿交換で関わりを持つ

 

血液型が不適合でも免疫抑制剤と血漿交換で移植は可能

これについてはABO式血液型について考えることが必要です。

A型の人は、A抗原と抗B抗体を持っています。

B型の人は、B抗原と抗A抗体を持っています。

抗〇〇抗体は〇〇抗原を異物と判断して攻撃します。

A型の人の血液をB型の人に輸血すると A型血液の人に含まれる抗B抗体が、B型血液に含まれるB抗原に攻撃してしまいます (血液型不適合)

腎臓の血管内皮組織にも抗原抗体は含まれるので、輸血の関係は臓器移植にも当てはまります。

 

ちなみにAB型の人はA抗原、B抗原を持ち、抗体は持っていません。 O型の人は抗原は持っておらず、抗A抗体、抗B抗体の両方を持っています。

レシピエント側に抗〇〇抗体があるとき、〇〇抗原を持つ臓器が移植されると抗体による攻撃で拒絶反応が起こります。

AB型の人が臓器提供を受ける際は、いずれの抗体も持っていないので、どの血液型でも適合し、

O型の人が臓器提供を受ける際は、A、B両方の抗体を持っているため、O型のみが適合となります。

 

昔は基本的には血液型が適合していなければ臓器移植はできなかったのですが、医療の進歩と免疫抑制剤により、血液型が不適合でも臓器移植が可能となりました。

 

この医療の進歩には、血漿交換が大きく関わります。

具体的には、臓器移植前にレシピエントに血漿交換を行い、 元から体内にある抗〇〇抗体を除去します。

新たに体内で作られる抗〇〇抗体は、免疫抑制剤を使って作らせないことで、 血液型不適合移植が可能となります。

 

レシピエントの術中管理

レシピエントは既に末期腎不全で透析導入されている方が多いです。

透析患者さんは尿が出ないので、手術中の輸液管理は基本的には絞り気味のことが多いですが、
移植後は尿が出るので、しっかり輸液負荷することが大事とのことです。

 

透析患者さんなのにしっかり輸液する、
手術前後で全く管理の仕方が変わるのが個人的にはとても不思議で面白いなと思いました。

腎臓移植 術後管理

この辺りは医者だけでなく、僕らコメディカルも注意するポイントだと思います。

 

術後は経過が良ければ透析は必要なくなるので、臨床工学技士はあまり関われないかもしれませんが、知っておくことは大事だと思います。

 

尿カテの閉塞や屈曲は簡単に見れますからね。

ちなみに縫合不全などによる出血は緊急オペの適応で、
放っておけば体内での大量出血となってしまいます。

急性拒絶反応というと、なんだかとんでもない症状のイメージでしたが、

実際は発熱、腹痛、尿量低下といった感じとのこと。

ただ、症状は重篤でなくても、せっかく移植した腎臓がダメになってしまっては意味がないですね。

既存の血液型抗体、HLA抗体が原因となっている場合(抗体関連型拒絶反応)
血漿交換をすることがあるので、移植後に緊急で血漿交換なんてことがあるかもしれません。

まとめ

腎臓移植は他職種が関わる壮大なチーム医療という実感がわきました。

その中で僕ら臨床工学技士は特に

  • レシピエントが既に透析導入されている際の透析
  • 血液型不適合移植、HLA抗体陽性例での術前血漿交換による抗体除去
  • 術後の抗体関連型拒絶反応が起こった際の血漿交換

この3点が特に関わるポイントだと思います。

特に術後で緊急の血漿交換などをする場合はほとんどが
ICUなどに出向いてすることになると思いますので、注意が必要ですね

適切なデバイスの選択、血漿交換とDFPPの使い分けなどの知識や技術で貢献できるのではないかと思いました。

本日もここまで読んでいただきありがとうございました。

ken

[参考文献]

1) 日本移植学会.”データで見る臓器移植”. 日本移植学会ホームページ.一般社団法人日本移植学会(2018-10-29)

2) 日本移植学会.”腎臓のQ&A”. 日本移植学会ホームページ.一般社団法人日本移植学会(2018-10-29)

3) 日本移植学会.”臓器移植のQ&A”. 日本移植学会ホームページ.一般社団法人日本移植学会(2018-10-29)