透析

透析療法 I-HDFについて

新しい透析療法の一つ、I-HDFについてのまとめ

どうも、筋トレ臨床工学技士ブロガーkenです。

本日はわりと新しい透析療法の一つ

I-HDFについて書いていきたいと思います。

 

自分の働いている施設で最近導入された治療法であり、

自己学習の意味合いも含め、要点をまとめていこうと思います。

僕と同じように、つい最近I-HDFを導入された施設で働いている方

今後導入される予定の方

予定はないけど、興味ある方などにとって、ご参考になる記事になればいいなと思います。

 

タイトルからお察しの通り、今回はがっつり医療ネタです。

筋トレ関係の話題が無いことをご了承ください、後日がっつり筋トレネタ書きます笑

それでは本日もよろしくおねがいします。

 

I-HDFについて 概要

I-HDF(Interminttent Infusion Hemodiafiltration)

間欠補充型血液透析濾過というものになります。

 

保険区分としては

オンラインHDFの一法として認められており、慢性維持透析濾過(複雑なもの)の加算と取ることができます。

ただし、オンラインHDFと同様

・オンライン用透析液水質基準

・ヘモダイアフィルタの使用

・専用の透析監視装置(コンソール)の使用

が保険請求の条件となります。

 

治療そのものの方法としては、ヘモダイアフィルタを介して間欠的に捕液を行い、捕液を行なった分を濾過(除水)するというものです。

 

ヘモダイアフィルタを介しての捕液と濾過なので、捕液用の回路などが不要、回路そのものは通常のHDの回路と変わらないため、捕液回路などを要するオンライン、オフラインのHDFよりも簡便です。

 

捕液と濾過の典型例として、

  • 一回辺りの捕液量・・・200mL
  • 捕液の速度・・・150mL/min
  • 捕液間隔・・・30分ごと

が一般的な設定となっています。

 

透析時間は基本的には4時間(240分)

最初の30分間は捕液をしないため、計7回の捕液回数となります。

一回あたりの捕液量200mL×7=1400mLの濾過となります。

濾過量としてはオンラインHDFなどと比べるとかなり少ないです。

このことから効率的には、HDよりは良いがオンラインHDFほどではない

という治療法になります。

 

I-HDFのメリット

I-HDFがもたらす臨床上の効果としては

・末梢循環の改善

・ヘモダイアフィルタのファウリングの抑制

があります。

それぞれについてもう少し触れていきたいと思います。

 

末梢循環の改善

通常の透析では、除水が進んでいくと循環血液量が減少していきますが、plasma refillingによって循環血液量は維持されます。

plasma refillingが追いつかなくなってくると、循環血液量は維持できなくなり、末梢組織の血流の低下が起こります。

 

I-HDFでは30分ごとの捕液により一時的に循環血液量が増加し、最終的な循環血液量の低下が通常のHDよりも抑えられると言われております。

 

クリットラインモニターやBV計でモニタリングしていると、捕液のタイミングで希釈による急激なΔBVの改善が見られ、その後次の捕液まで徐々に下がっていきます。
治療中はこの繰り返しで、ΔBV波形は通常のHDのように綺麗な右肩下がりではなく、ギザギザな形の右肩下がりとなります

また、レーザー血流計を用いた末梢組織の血流モニタリングでも、捕液のタイミングで血流の増加がみられます。

 

ヘモダイアフィルタのファウリングの抑制

I-HDFによる捕液はヘモダイアフィルタを介しての捕液となります。

逆濾過補充(透析液が中空糸の外側の透析液側から、中空糸の内側の血液側に入り込む)のため、中空糸のポア(小さい孔)へのタンパク質などの詰まり(ファウリング)を洗い流す効果があります。

 

通常のHDではこのような現象はないので(意図しない内部濾過はあると思いますが)、通常のHDに比べて、β2-MGやα1-MGのような分子量の大きな物質のクリアランスが低下しにくく、溶質除去率の亢進が期待されます。

 

膜のクリアランスは低下しないと思うのですが、除去しようとして詰まっていた溶質が逆濾過により洗い流されるということは、体内に戻ってしまうということ。それって結局、分子量の大きい物質の除去量はあまり良くない?詳しい人教えてください笑

 

末梢循環改善と膜洗浄効果によってもたらされる溶質除去の向上

末梢循環が良くなることで、末梢の組織内の尿毒素物質の洗い出し(組織から毛細血管内への尿毒素の流入)が期待されるため、尿毒素物質の除去量(除去率ではなく)が良いと言われています。

言い換えると、末梢血管の表面積を保つと、組織からの溶質の取り込みをよくして、除去量の増加につながると言えます。

 

末梢の組織内の尿毒素物質の洗い出しについて

小動脈から組織毛細血管に流れる血液は、血圧による水分の組織への移動(濾過)が起こります。
この水分の移動とともに、無機物質、糖質、アミノ酸などが組織に供給されます。

そして小静脈に向かう組織の毛細血管の流れでは、濾過されない大きな分子量物質(主にアルブミンなどの血漿タンパク質)によって発生する膠質浸透圧により組織から水分などが毛細血管内に入ってきます。
この水分の移動とともに、組織の老廃物、代謝産物などを血管内に回収して、体外に排出されます。(透析においてはダイアライザーでの除去)

この血管と組織間での循環が、体内の尿毒素などの除去に関して重要の要素の一つであります。

 

また、先ほどのヘモダイアフィルタの洗浄効果による溶質除去率、クリアランスの維持に優位に働きます。

どんどん劣化していくフィルタを30分ごとに洗えばクリアランスは維持されるというのは、考えてみればわかりますね。

I-HDF研究会の発表によると、特にα1-MGのクリアランスの経時変化は通常HDに比べて良好に維持できているとのことです。

 

I-HDF 適応患者

主な適応患者としては

・低栄養(オンラインHDFに比べアルブミンが抜けにくい)

・高齢者(オンラインHDFでは効率が良すぎる、タンパク質なども多く抜ける、でも除去効率は稼ぎたい)

・血圧変動が大きい(循環血液量の維持)

・末梢動脈疾患(循環血液量の維持)

となります。

 

I-HDFモードを搭載した装置について

国内で販売されている透析監視装置(以下コンソール)では

・JMS社・・・GC/SD-300N

・東レ・メディカル社・・・TR-3300M/S

・ニプロ社・・・NCV-3

・日機装社・・・DCS-100NX

があります。

 

各々捕液の設定プログラムなどに特徴があります。

中でもニプロ社のNCV-3は、

捕液量

捕液回数

捕液速度

捕液速度

回収量(捕液分の除水量)

を自由に設定でき、個々の患者さんの血行動態などに合わせたオーダーメイドのプログラムを組むことができます。

 

例えば、透析前半は比較的血圧が安定しているが、後半下がりやすい人に対しては、前述したデフォルト設定ではなく、前半に先に捕液分を回収して、後半に捕液を多くするなどのように設定するなどですね。

 

この辺を積極的に行っている施設から、それまでオンラインHDFで除水管理などに難渋していた人が、I-HDFでプログラムを組み、除水が最後まで行えた、低血圧に対する処置の回数が減ったなどの学会報告がありました。

 

ただ、一回あたりの捕液量を多くしすぎたり、回数を多くしすぎると、回収量が多くなりすぎる、除水時間が短縮するため除水速度が上がってしまい、結果血圧低下などを招く可能性も出てくるようです。(除水ポンプの逆回転により間欠補充をするため、捕液中を除水できない。JMS社のコンソールはそのような仕様ですがニプロ社も同じかどうかは不明ですので、後日調べて追記します)

 

自由度が高すぎて、使いこなせるかどうかはその施設次第?、普段から患者さんのそばで透析に関わってる臨床工学技士や看護師の腕の見せどころとも言えますかね。

 

I-HDFでも効果が得られない人もいる?

捕液をしても末梢循環の改善効果が得られない例もあるようです。

メカニズムはまだ不明ですが、血管の性状によって左右される?とのこと

石灰化が強かったりするとやはり厳しいのでしょうか。

 

今後のI-HDF

I-HDFに更に工夫を加えた方法として、

・後希釈オンラインHDFとの併用

・温度プログラムを取り入れたI-HDF(ホットショットI-HDF)

などがあるようです。

 

ホットショットI-HDFなんて、末梢動脈疾患の方とかに効きそうですね。

 

まとめ

以上、ひたすらI-HDFについての記事でした。

捕液のプログラムなど、透析療法の中ではかなり自由度のきく治療法だなぁという思いです。

 

当院はまだ採用したばかりで、デフォルト設定で基本的には行っていますが、
BV計や血流計などで適切にモニタリングし、患者さんの血行動態を掴み、臨床症状、血管の石灰化などのバックグラウンドを考慮して、その患者さんにとってのベストな捕液プログラムを組み、
除水の完遂、症状の改善などに良い結果がもたらされると考えると、とてもやりがいのある治療の一つであると思います。

 

まだまだ勉強中で至らない点など多々あると思います。

実際に使用している施設の方からご意見などあればコメントやTwitterでのDMなどお待ちしております。

本日もここまで読んでいただき、ありがとうございました。

ken