透析

CHDFとHDの違いについて、臨床工学技士がわかりやすく解説します

ICU若手看護師
ICU若手看護師
CHDF?HD?
どっちも透析っぽいことしてるのはわかるけど、
具体的に何が違うのかイマイチよくわからない

 

ERに移動してきたばかりの看護師
ERに移動してきたばかりの看護師
患者さんに及ぼす影響の違いや看護中に気にしなきゃいけないポイントを知りたい

 

この記事は普段ICUや救命センターなどの集中治療領域で業務にあたる
若手看護師、臨床工学技士、その他医療従事者向けの内容となっております。

 

ken
ken

今回は2012年4月から2019年3月まで、
臨床工学技士としてER、ICUでHD、CHDFなどの血液浄化療法の準備、導入、治療中の管理などに携わっていた私kenが、
文献や自身の経験をもとにCHDFとHDの治療の違いや気をつけるべきポイントについてなるべくわかりやすく解説します。

 

CHDFとHDがどう違うのか

結論から言うと

二つとも血液浄化療法になりますが、
治療時間、治療効率、治療ができる環境などにおいて全く違う特徴を持ちます。

 

血液浄化療法は以下の種類に分かれます。

ER、ICUなどで施行される血液浄化法は

持続的腎機能代替療法(continuous renal replacement therapy;CRRT)

間欠的腎機能代替療法(intermittent renal replacement therapy;IRRT)

の2つに分類されます。

参考:参考文献1)

 

CRRTにはCHDFをはじめ、CHD、CHFなどが含まれます。

IRRTにはHDをはじめ、HF、HDFなどが含まれます。

 

今回はそれぞれの血液浄化療法において代表的な、
CHDFとHDの違いに焦点を合わせて解説します。

 

大学病院で働く臨床工学技士の日常 透析室編学生さんや専門領域の病院で働いてる人必見!大学病院の臨床工学技士、透析室での一日 どうも、当サイト管理人のkenです。...

 

この記事の内容は、あくまでひとつの参考にして頂けると幸いです。

治療条件などについてもあくまで目安です。

この記事によって起きた事故等におきましては、一切の責任を負いかねますことをご了承ください。

 

CHDFとHDの大きな違い3つ

CHDFとHDの治療時間

まずは治療時間が大きく違います。

なぜなら、治療効率が異なるからです。
(この違いについては後述)

 

以下がよくあるそれぞれの一回あたりの治療時間と治療回数です。

HD・・・治療時間が4時間程度、
週に2、3回

CHDF・・・治療時間は24時間、
それを連日施行

 

HDの場合は一回あたりの治療時間が短く、
基本的には毎日行う治療ではありません。

CHDFの場合は数日間において治療が続きます。

 

そのため、主に以下の点について考慮する必要があります。

  • CTやMRIなど、ベットサイドでは出来ない検査をするタイミング
  • 離床を進めるためのリハビリをするタイミング

 

HDは1回4時間なので、HDの前後でそれらの予定を組むことが出来ます

 

CHDFは治療中は常にカテーテルを介して血液を体外循環させているため、

鼠蹊(そけい)部にカテーテルが挿入されている場合、下肢を動かすリハビリは基本的には出来ません。

 

鼠蹊部にカテーテルが挿入されている状態で下肢を動かすリハビリなどを行うと、
下肢の動きによってカテーテルが体内で屈曲してしまいます。

屈曲してしまうとカテーテルから血液が引けない、血液を送り返せないなどのトラブルの原因となってしまいます。

こうなってしまうと血液回路内の圧力の急上昇、急降下が起こります。

血液を送り返そうとしてもカテーテルが屈曲しているため送れない→血液回路内圧の上昇

血液をポンプで吸引しようとしても吸引できない→血液回路内圧の低下

 

CHDFのコンソール(CHDFを行っている機械)は
安全機構として血液回路内の圧力をモニタリングしています。

血液回路内圧の上昇をモニタリングしていないと
ヘモフィルター(HDでいうダイアライザー)の破損、回路の破損などが起こります。

血液回路内圧の低下をモニタリングしていないと
陰圧による溶血などが起こります。

 

このような事態が起きないよう、
設定している圧力の範囲を超えるとアラームが発生し、
血液ポンプも止まってしまい治療が一時的に停止してしまいます。

頻回に停止してしまうことで以下のことが起こります。

  • 実際の治療時間が短くなってしまって腎代替療法としての目的を果たせない
  • 頻回なアラーム対応によるスタッフの業務多忙につながる
  • 血液の流れが止まる時間が多くなることで、
    回路内で血液が固まりやすくなってしまい、
    血液回路の交換が必要になったり、
    最悪の場合患者さんに血液を送り返せず破棄することになってしまう

 

CHDF使用中の患者さんでリハビリや検査などを行う時は、
回路交換のタイミングに合わせて行うことが多いです。

 

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CHDFとHDの治療効率の違い

尿毒症物質の除去効率の違い

HDの場合はダイアライザー、
CHDFの場合はヘモフィルターを介して、
血液と透析液の間で拡散と限外濾過の原理により血中の尿毒症物質を除去します。

 

尿毒症物質を体内から除去する方法そのものはCHDFでもHDでも同じなのですが、
透析液の使用量はCHDFとHDでは大きく異なります。

CHDF・・・1日あたり約16〜20L

HD・・・4時間透析で約120L

透析液の量だけで比べると、
HDはCHDFの約50倍の透析液を使います。

 

CHDFがいかに低効率であることがわかります。

CHDF・・・透析効率は低いが長時間

HD・・・透析効率は高いが短時間

 

除水速度の違い

また、尿毒症物質の除去だけでなく、
余剰な水分の除去(除水)についても大きく異なります。

CHDFでは除水を24時間で行う

HDでは除水を4〜5時間で行う

同じ水分量を除水しようとするとき、
CHDFとHDでは時間当たりの除水量が大きく異なります。

 

ken
ken
イメージとしてはCHDFはゆっくり除水、
HDは素早く除水という感じです。

 

CHDFとHD
それぞれどんな患者さんに適しているのか?

全身状態が良好で循環動態の安定している場合には間歇的血液浄化法、

systemic infiammatori responce syndrome(SIRS)や多臓器不全(MOF)を合併し循環動態が不安定な場合には持続血液浄化法が一般的に選択されます。

引用:参考文献2).p37

 

患者さんの全身状態を見てどちらが適しているかを考えることになります。

 

HDは高効率で腎機能補助を行えますが、
尿毒症物質の急速な除去、電解質、水分バランスの急速な変動に対して、
血圧の維持が困難になると循環動態が崩れます。

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循環動態が安定していて急いで腎機能補助をしたいという場合はHD

循環動態をなるべく崩さず、
マイルドに腎機能補助をしたいという時は
CHDFが選択されることが多いです。

 

ken
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また、CHDFの場合は長時間血液を対外循環させるため、
抗凝固剤の使用量も多くなります。

出血傾向のある患者さんなどに対しては治療法の選択は慎重に考慮する必要があります。

 

CHDFとHDで使う監視装置の違い

CHDFとHDはそれぞれ異なったコンソールを使います。

一番大きな特徴は水道水を使うかどうかです。

 

CHDFの場合、
透析液の使用量が保険適応の関係で使える量が1日約16〜20Lと決まっています。

そのため、ろ過型人工腎臓捕液と言われる一本1〜2Lの輸液バックを必要量コンソールにつけます。

 

HDの場合、
1分間に500mLの透析液を使います。

人工腎臓用透析液と言われる溶液(基本的にはA剤、B剤と言われる2つで1セット)

これを大量のRO水(水道水から作った不純物の取り除かれた水)

で希釈して透析液として使います。

 

まとめると

CHDF・・・電源さえあればどこでも治療ができる

HD・・・水道設備、RO水作製装置が必要

病室や部屋によっては、
水道配管設備が無い、ベッドサイドまで届かないなんてことあり得ます。

入床する際にHDが必要そうかどうかある程度検討をつけてベッドを決めると、
のちのち移動などしなくて済みます。

 

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CHDFとHDの違い まとめ

CHDFとHDの違いをまとめると

電解質補正、尿毒症物質除去、余剰水分除去については

短時間でガッツリ行うのがHD

長時間でゆっくり行うのがCHDF

 

治療環境の違いについては

HDはベット付近に水道設備が必須

CHDFは患者さんが長時間移動が制限されるので検査やリハビリのタイミングを考慮する必要あり

 

 

ken
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回の記事の内容が集中治療に携わる方のお役に立てたら幸いです。

 

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[参考文献]

1)川西 秀樹他 「急性血液浄化法に関する名称・用語」試案
特定非営利活動法人 日本急性血液浄化学会 最終閲覧日:2018年11月5日
http://jsbpcc.umin.jp/glossary/

2)篠崎正博 秋澤忠男 編集 『急性血液浄化法徹底ガイド第2版』,2010年,p36-37