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ビジレオなどで測定できる循環動態とは?モニタリングする意義、方法、ME機器についてまとめます

どうも、筋トレ臨床工学技士ブロガーkenです。
本日は主にICUやERなどの集中治療領域で重要な要素のひとつである、血行動態のモニタリングについて
・そもそも循環動態とは何か?
・循環動態を知る意味は?
・どうやって循環動態をモニタリングできるのか?
などについてまとめていきたいと思います。
・普段から集中治療に携わっている方には、知識のおさらい
・集中治療領域には関わっていないCEの人には、こんなことやっているんだーということ知ってもらい、知識の幅を広げてもらいたい
・これからCEとして働こうと考えている学生さんなどには、集中治療領域のMEの仕事に少しでも興味を持ってもらいたい
という目的で書いていこうと思います。
ちなみに集中治療領域以外についてはこちら↓
大学病院で働く臨床工学技士 透析室編
大学病院で働く臨床工学技士 夜勤編
それでは本日もよろしくお願いします。
循環動態とは何なのかをなるべくわかりやすく説明
循環動態とは簡単にいうと、
血液を体の隅々まで需要に見合った量でちゃんと供給できているか
という考えでいいと思います。
身近なものから考えていくと例えば透析をやっている患者さんに対して、
血圧を測定しますよね?
なぜ血圧を測定するか?
循環動態を知るためです。
どういうことかというと
血圧はその名の通り血液が送られる時に生じる圧力です
圧力とは何で構成されるのかを考えると、小学校の時に習ったオームの法則に当てはめて考えましょう
電圧V=電流I×抵抗R
これをそのまま血圧に置き換えると
血圧=血流量(心拍出量)×体血管抵抗
ということになります。
血圧が下がるということは心拍出量、体血管抵抗の低下を表しています。
腕を機械で加圧するだけで、間接的に循環動態パラメーターの一部を把握することができるということです。
これをもっと細かく考えてみましょう。
血圧=心拍出量(CO)×体血管抵抗(SVR)
心拍出量(CO)はさらに以下の要素で構成されます
心拍出量(CO)=一回拍出量(SV)×心拍数(HR)
心拍数は1分間に心臓がドキドキする(血液を送り出す回数)です。
そして一回拍出量(SV)はさらに以下の要素で構成されます
・前負荷(血管内にある血液量の指標)
・後負荷(血管拡張度合いの指標)
・収縮力(心臓のポンプ機能の指標)
いろんな数値や式が出てきましたが
結局循環動態をモニタリングするということは
循環動態をモニタリングする意義とは
循環動態が維持されているということは、体の様々な組織に酸素などの栄養の供給が維持されているということです。
循環動態は様々な循環動態パラメーターで構成されています。
何らかの影響でどれかが不足すると他で補おうとします。
(例えば、一回拍出量(SV)が低下したら心拍数(HR)を上げて心拍出量(CO)を保つ)
そしてこの他のもので補うことも間に合わなかった時、循環動態は破綻します。
血行動態を構成する要素を数値でモニタリングすることで、循環動態を破綻させる前に様々な対応を考慮して、治療を行えます。
例えば
・前負荷(血管内にある血液量の指標)低下→輸液を増やしてみよう
・後負荷(血管拡張度合いの指標)の変化→血管拡張、収縮させる薬を使おう
・収縮力(心臓のポンプ機能の指標)の低下→心臓の働きを助ける薬、機械で補助してあげよう
など、あくまで一例ですがこんな感じで治療に役立てることができます。
循環動態を構成するパラメーターを数値で知る方法
様々な機械やデバイスで血行動態を知ることができますが、それぞれ特徴もあるので簡単にまとめます。
・肺動脈カテーテル
臨床ではスワンガンツカテーテルとよく言われているものです。
これはエドワーズライフサイエンス社の商品名で、一般名は肺動脈カテーテルと言います。
肺動脈カテーテルを用いることで、
・右心系の圧力
・心拍出量
を測定することが可能となります。
(出典:スワンガンツカテーテル製品カタログより)
写真の側孔ルーメンに圧力トランスデューサを接続すれば中心静脈圧(CVP)
先端孔ルーメンに接続すれば肺動脈楔入圧(PAWP)
を測定できます。
また、心拍出量は熱希釈法という原理で測定します。
右心房の位置にある注入用側孔から冷水を注入し、先端のサーミスタ(温度変化を電気信号に変換させるセンサ)で一度冷やされた血液温度がどれぐらいで元の温度に戻るかを測定して、心拍出量を求めます。
わかりやすく例えると
あなたはある川の中に入っています。
川の上流からめちゃくちゃ冷たい水が流れてきます
川の勢いが激しいと
「冷たっ!」
と思いますが、すぐ流れてしまうので一瞬で冷たさは過ぎ去ります。
この川の勢いが心拍出量と考えてください。
川の勢いが弱い(心拍出量が少ない)と上流からのめちゃくちゃ冷たい水がゆっくり流れていくので、
「いつまでたっても冷たいわぁ」
と感じます。
この温度変化をグラフにして(熱希釈曲線)心拍出量がわかります。
この肺動脈カテーテルを専用のモニター(ビジランス)に接続することで、各種パラメーターをベッドサイドでモニタリングすることが可能となります。
(出典:スワンガンツカテーテル製品カタログより)
・ビジレオモニター
(出典:ビジレオ製品カタログより)
これは主に
・心拍出量(CO)
・心拍出量係数(CI:COを体表面積で割って標準化した値)
・一回拍出量(SV)
・一回拍出量係数(SVI)
・体血管抵抗(SVR)
・体血管抵抗係数(SVRI)
などを知ることができます。
最大のポイントは、動脈圧波形を入力するのみで測定できるという簡便さです。
重症患者さんには橈骨動脈などに細い管を留置して、常時血圧をモニタリングしたり、いつでも動脈から採血できるようにしていることがあります。
(俗にいうAライン留置)
この動脈圧波形を生体情報モニターに血圧として表示するのに、圧力トランスデューサというものを使います。(圧力→電気信号に変換する素子)
この圧力トランスデューサをビジレオ専用のフロートラックセンサーというものに付け替えて、ビジレオモニターに接続、必要な情報を入力するだけで上記のパラメーターをモニタリングすることができます。
また、別途プリセップCVオキシメトリーカテーテルというものを接続することで中心静脈血酸素飽和度(ScvO2)がモニタリングできます。
中心静脈血酸素飽和度(ScvO2)を知ることで体の酸素消費量、酸素供給量を知ることができます。
(ScvO2が高い→酸素供給量が十分、もしくは組織で酸素が利用できずに戻ってきているだけ?)
(ScvO2が低い→酸素供給量が足りない?激しい体動や発熱で酸素消費量が増加している)
先ほどの肺動脈カテーテルのように、
・右心系へのカテーテル挿入
・熱希釈
が不要となるのが大きなメリットですね。
一方、肺動脈圧(PA)、肺動脈楔入圧(PAWP)が測定できないというデメリットがあります。
ちなみにビジレオとビジランスというものを混同されている方もいらっしゃる?かもしれませんが、ビジランスとは先ほどの肺動脈カテーテルの情報を表示するモニターで全くの別物です。
・EV 1000
これは先ほどのビジレオモニターにあるフロートラックシステム、プリセップCVオキシメトリーに加えて、ボリュームビューモードという機能が加わっておるものです。
経肺熱希釈法という方法で
・肺血管外水分量(EVLW)
・肺血管透過性係数(PVPI)
・全拡張終期容量 (GEDV)
・全心駆出率(GEF)
などがわかり、肺水腫の鑑別に役立ちます。
経肺熱希釈法は簡単にいうと、先ほどの肺動脈カテーテルでの熱希釈法と原理は同じですが、
中心静脈(右房)から冷水注入をして、大腿動脈の温度センサーで温度変化をみているということです(冷水が肺を通過する)
また、ビジレオやビジランスと違い、循環動態のパラメーターをグラフィカルに表現していて、わかりやすいというのもポイントです。
(出典:EV1000製品カタログより)
循環動態モニタリングについて まとめ
以上簡単にですが循環動態の意味、測定する目的、測定機器についてでした。
自分が使ったことある機器についてのみの記載ですが、最近は指にプローブをはめるだけ、体に電極をつけるだけで循環動態パラメーターをモニタリングできる機械もあるようです。
(筋トレしてる時の自分の循環動態とか気になりますね)
本日もここまで読んでいただきありがとうございました。


参考文献:看護師・研修医・臨床工学技士のための救急・ICUのME機器らくらく攻略ブック~さらば機械オンチ、さらばME機器トラブル~